COMMON / DATA GUIDE
計測データの品質|FFT・RMSの前に確認する時刻・欠損・単位
MicroStrain計測データをFFT・RMS解析する前に、サンプルレート、時刻、欠損、単位、解析区間を確認する方法を解説します。
波形がきれいに表示されていても、測定条件や時刻の扱いが違えば、FFTやRMSの比較結果は大きく変わります。
MicroStrainで取得したデータを解析するときは、解析方法を選ぶ前に、単位、レンジ、時刻、サンプル間隔、比較条件を確認します。
このページでは、SensorConnectやCSVのデータをFFT・RMSへ進める前の確認項目を整理します。
このページでできること
- FFT前に必要なデータ条件を確認する
- サンプルレートと周波数分解能の関係を理解する
- 時刻ずれを位相差へ換算する
- 複数レートの空欄と欠損を区別する
- 保存容量と通信量を概算する
- RMSのDC成分や比較条件を整理する
1. 解析前に確認する5項目
| 項目 | 確認する内容 | 間違えると起きること |
|---|---|---|
| 入力と単位 | g / m/s²、rad/s / deg/s、荷重単位、測定軸 | 倍率や意味の違う値を比較する |
| レンジ | 飽和していないか | クリップした波形をFFTする |
| 時刻 | 測定時刻かPC受信時刻か | 通信遅れを現象の位相差と誤認する |
| サンプル間隔 | レート、等間隔性、欠損 | 不規則データを等間隔として処理する |
| 比較条件 | 取付、運転状態、フィルター、解析区間 | 条件差を異常と判断する |
最初にこの5項目がそろっているか確認します。
2. サンプルレートだけで測定帯域は決まらない
等間隔サンプリングでは、ナイキスト周波数はサンプルレートの半分です。
例えば1024 Hzサンプリングなら、ナイキスト周波数は512 Hzです。
ただし、実際に有効な測定帯域は、
- センサー自身の周波数特性
- 入力回路
- Low-Pass Filter
- 取付方法
- アンチエイリアシング条件
にも依存します。
「1024 Hzで収録したから512 Hzまで正確」と自動的には判断できません。
3. FFTの周波数刻みは解析時間で決まる
サンプルレートをfs、解析点数をNとすると、周波数刻みは概ね、
Δf = fs / N
です。
1024 Hzで収録した場合、
| 解析点数 | 解析時間 | 周波数刻み |
|---|---|---|
| 1,024 | 1 s | 1 Hz |
| 4,096 | 4 s | 0.25 Hz |
| 8,192 | 8 s | 0.125 Hz |
となります。
窓を長くすれば周波数刻みは細かくなりますが、短時間だけ変化する現象を平均化して見ることになります。
スペクトルを比較するときは、少なくとも次をそろえます。
- サンプルレート
- 解析点数または解析時間
- 窓関数
- オーバーラップ
- 平均化
- DC成分の扱い
- 振幅表示:Peak / RMS / Power / PSDなど
4. 時刻ずれは高周波ほど大きな位相差になる
2つの正弦波の測定時刻にΔtのずれがある場合、周波数fでの位相差は、
φ [deg] = 360 × f × Δt
です。
| 周波数 | 時刻差 | 位相差 |
|---|---|---|
| 100 Hz | 50 µs | 1.8° |
| 1 kHz | 50 µs | 18° |
| 1 kHz | 5 µs | 1.8° |
この表の時間差は説明用です。MicroStrain製品の同期保証値を示すものではありません。
位相や伝達特性を比較する場合は、用途で許容できる位相差から必要な同期精度を決めます。
5. PC受信時刻とセンサーTimestampを分ける
USBやネットワークでは、OSや通信バッファによってパケット到着時刻が変動します。
複数機器を時間軸で比較するときは、可能であればセンサー側のTimestampを利用します。
特にCV7/GQ7では、MIP TimestampやPPS、GNSS Timeなどの仕組みがあるため、用途に合った時刻基準を選びます。
同じSensorConnect画面に波形が並んでいることだけでは、必要な精度で測定時刻が一致していることを証明できません。
6. CSVの空欄をすぐ欠損と判断しない
複数レートのデータでは、低レート項目が毎パケットに含まれない場合があります。
例えば、
- Accel:100 Hz
- Gyro:50 Hz
なら、100 Hzの時刻列へ展開したCSVでGyro側に空欄が見えることがあります。
確認順序は、
- 各チャンネルの設定レートを確認
- 有効値のTimestamp間隔を確認
- 元データとCSVを比較
- 本来存在するはずのTimestampだけが抜けているか確認
- 同時刻の通信状態・電源・機器状態を確認
です。
空欄をゼロへ置換してから原因を調べるのは避けます。
7. RMSはDC成分を含めるかで変わる
RMSは、
RMS = sqrt(mean(x²))
です。
平均値を含む信号と、平均値を除いた変動成分ではRMSが異なります。
例えば一定値1だけの信号なら、
- DCを含むRMS:1
- 平均を除いた変動成分のRMS:0
です。
振動のRMSを比較するときは、
- 重力成分
- DCオフセット
- High-pass / Low-pass Filter
- 評価帯域
- 時間窓
をそろえます。
8. 保存容量を短時間データから見積もる
長時間計測では、収録前に保存容量を確認します。
理論上の数値データ量だけでなく、CSVでは、
- 時刻
- 区切り文字
- 文字列表現
- ヘッダー
- メタデータ
が追加されるため、単純なサンプル数 × 4 byteより大きくなることがあります。
実際には短時間収録してファイルサイズを測り、予定時間へ比例換算する方法が確実です。
例:10分の実ファイルが200 MBなら、同条件で6時間は概算7.2 GBです。
空き容量には余裕を持たせます。
9. 異常傾向を比較するときの条件
FFTやRMSの増加だけから故障原因を一意に決めることはできません。
傾向監視では、
- 同じ取付位置
- 同じ軸方向
- 同じ運転速度
- 同じ負荷
- 同じ温度条件
- 同じサンプルレート
- 同じ解析帯域
- 同じRMS / FFT条件
で比較します。
条件が違うデータを比較する場合は、その差を記録して判断します。
解析前チェックリスト
- [ ] 単位を確認した
- [ ] センサー・入力レンジが飽和していない
- [ ] 使用している時刻の意味を確認した
- [ ] サンプル間隔を確認した
- [ ] 欠損・空欄の意味を確認した
- [ ] フィルター条件を記録した
- [ ] 解析区間を記録した
- [ ] FFT条件を記録した
- [ ] RMSでDCを含めるか決めた
- [ ] 比較する運転条件をそろえた
参考資料
- HBK SensorConnect
https://www.hbkworld.com/en/products/software/inertial-sensor-software/sensorconnect - GQ7 Multiple Rate Data
https://files.microstrain.com/GQ7%20User%20Manual/dcp_content/introduction/Multiple%20Rate%20Data.htm - GQ7 FAQ
https://files.microstrain.com/GQ7%20User%20Manual/user_manual_content/FAQ/FAQ.htm
原典リンク
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