温度補償の役割
MEMS加速度計やジャイロのオフセット・感度は温度で変化します。温度補償は、再現性のある温度依存を校正モデルで補正し、広い温度範囲で出力の変化を抑えるための処理です。常温1点でゼロを合わせることとは役割が異なります。
このページでわかること
- 常温1点校正と温度補償の違い
- 温度履歴・自己発熱・暖機が実機へ与える影響
- 「校正済み」だけでなく校正温度範囲まで比較する理由

温度でオフセットと感度が変わる
MEMSセンサは温度が変わると、ゼロ入力時のオフセットや入力に対する感度が変化します。屋外の季節変化だけでなく、電源投入後の暖機、筐体内部の自己発熱、エンジンやモータ付近の熱源でもセンサ温度は変わります。
ジャイロのバイアス変化は時間積分されて姿勢誤差へつながり、加速度計のオフセット変化は速度・位置推定へ影響します。したがって、航法用途では「常温でゼロが合う」だけでなく、使用温度範囲で出力特性がどう変わるかが重要です。
温度補償は温度依存をモデル化する
温度補償では、温度を変えながらセンサ出力の変化を取得し、再現性のある温度依存を補正モデルへ反映します。常温の1点校正では、その時点のオフセットを合わせられても、温度が変わった後の変化までは補正できません。
一方、温度補償を行ってもランダムノイズ、振動による誤差、取付ずれ、外部補助の欠損まで消えるわけではありません。温度によって再現性を持って変化する部分と、それ以外の誤差源を分けて考えます。
温度補償の4段階
1. 温度変化
外気、暖機、自己発熱、取付先からの熱でセンサ温度が変わります。
2. 特性変化
オフセットや感度が温度に応じて変化します。
3. 校正・補償
温度とセンサ出力の関係をモデル化し、再現性のある変化を補正します。
4. 実機確認
補償後も実際の温度履歴・振動・取付条件で必要性能を満たすか確認します。
温度補償を製品選定へどう使うか
「校正済み」だけでは比較条件が不足する
製品仕様に「calibrated」「temperature compensated」と書かれていても、校正した温度範囲、対象パラメータ、補償後の残留誤差、評価方法が同じとは限りません。常温1点の校正と広い温度範囲を使った補償は分けて確認します。
使用温度ではなくセンサ自身の温度履歴を見る
周囲温度が一定でも、電源投入後の自己発熱や筐体内部の熱移動でセンサ温度は変わります。また、寒冷地から暖かい室内へ移動する場合など、温度変化の速度も実機挙動へ影響します。代表的な暖機時間と実際の温度遷移を試験条件へ含めます。
温度評価情報も型式選定に使える
MicroStrainには温度補償を含む製品群があり、メーカーの温度評価例が公開されているものがあります。常温仕様だけでなく温度変化時の挙動を選定材料へ加えられるため、屋外、車両、無人機、発熱源周辺などの用途を検討しやすくなります。利用できる評価情報は型式ごとに異なります。
温度補償後も他の誤差源を分離して評価する
補償後のドリフトが残る場合、それが温度モデルの残差なのか、振動・取付・ランダムノイズ・外部補助の問題なのかを切り分けます。温度だけを変える試験と、実機運動を含む試験を分けて行うと原因を特定しやすくなります。
実装・選定の確認手順
- 想定する動作温度と温度変化速度を整理する
- 候補製品の校正温度範囲・補償対象を確認する
- 暖機・自己発熱・取付先との熱結合を含めて試験する
- 温度補償後の残留誤差を実機条件で評価する
温度補償の比較ポイント
比較するポイント
校正温度範囲、補償対象、残留バイアス、自己発熱条件、評価資料を見ます。
MicroStrainの特長
温度補償を含む製品群と温度評価例を、常温仕様とは別の選定材料として確認できます。
実運用での意味
屋外や発熱源周辺など温度が変わる用途で、温度起因のドリフトを事前に評価しやすくなります。
条件:温度補償は振動、ランダムノイズ、取付誤差などを消す機能ではありません。過去の評価例は特定条件の例として扱います。
選定前の確認事項
- 動作温度と校正温度範囲
- 温度変化速度と暖機時間
- 自己発熱と取付先との熱結合
- 補償対象と残留誤差
- 必要な姿勢・航法精度
関連情報
温度条件からIMUを選ぶ
使用温度、暖機、自己発熱、振動環境、必要精度を整理して候補を比較します。
